神道と鳥居

神社を参拝するにあたって、人々がほぼ必ずというほど目にする構造物に鳥居があります。その定義は明確に決まっているわけではありませんが、一般には左右二本の柱に笠木や貫などの横材を組み合わせたものをいいます。これは神社の内側と外側を区切るための境界に建てられた一種の門であり、その内側はすなわち御神域として敬意を払ったふるまいが求められるものとされています。また外部からのけがれを寄せ付けないための、いわば結界の意味合いも含まれています。現在でも境内に入るにあたって一礼をし、祀られている神様に対して敬意を示す参拝者の多いことでも頷けます。

このような構造物がどのような経緯でつくられるようになったのか、その由来については諸説あります。わが国の神話によれば、太陽神である天照大神が天岩戸にお隠れになって世界が闇に包まれたとき、困り果てた他の神々が知恵を出し合い、常世の国に住む鶏を集めて鳴かせたといいます。鶏は朝日が昇るとさかんに鳴く習性があることから、太陽神を呼び戻すには適役として抜擢されたものです。そしてその鶏が止まった木こそが起源であるというのが神道的な解釈です。

ほかにも外国から伝来したという説もあり、たとえば木でつくられた鳥型を長い竿の上に載せた朝鮮半島の鳥竿、二本の柱の上に梁を渡して集落入口の門とした中国大陸の牌坊などがその起源ともいわれます。鳥居といっても実は色合いや構造などにはいくつかの種類があり、すべての神社で同じというわけではありませんが、祀られている神様によって変わる場合が多いといえます。

たとえば伊勢神宮では上部にある笠木が一直線になった神明鳥居が用いられており、部材の柱には色を塗らず白木のままとなっています。伊勢神宮から各地に勧請された神明社、神明宮などでも同様のスタイルで建てられていることが多いようです。またこの笠木の両端が上側に反り返ったフォルムになっているのが明神鳥居であり、木造であれば朱色に塗られているのがふつうで、伊勢系以外の全国の多くの神社にみられます。ほかにも日吉神社にはじまる山王社、伏見稲荷大社を御本社とする稲荷社などが、それぞれ独特なスタイルのものを用いています。

後の時代には願望が成就したあかつきに神様に感謝を示すために献納する行為もさかんになりました。伏見稲荷大社の奥の院へと続く参道にある千本鳥居もその例であり、どこまでも続く朱色の風景は京都の観光名所のひとつとして親しまれています。